直江のまっさらでまっすぐな愛を受けていると、私もなんだかおかしな気分になってくる。たぶん、イライラピリピリしたいつもの感じでいると、与えられるものを取り零してしまう、というのが理由のひとつだ。100円玉掴み取りイベントで、握り拳を突っ込む人間は誰も居ないだろう。……なんか頭の悪そうな例えをしてしまったな。
まあ、要するに。なんというか、認めたくないけれど。
私はどうやら、「すなお」になっているらしい。
正直、今までの態度が素の中の素だと思っていたので、ちょっと癪である。私の知らない私を、よりにもよって直江に引き出されているということが。直江のことは好きだけれど、こいつどうなんだろうと思うところは未だにあるし……。「愛すれば愛を返してくれる」とかいうこいつの性善説だって、その最たるものなのに、私が体現してしまっているのも……。
「名前」
……でも、どれだけ納得できなくても、好きなものは好きなんだよなあ。
こうやって、直江の膝の上で、がばーっと抱きついていると、毒気が抜かれるような感じがする。抱き返されたり、髪や頬を撫でられたりすると、もっとそういう風になる。耳の近くで聞こえる、私の名を呼ぶ声も、好きだ。
もっとしてほしい、と思って、少し驚く。恋とかいうものは、忙しなくて落ち着けないものだと認識していた。それこそ、直江のうるささみたいな。でも実際のところ、なんでか落ち着くし、意味が分からないけれど直江までうるさくなくて、静かになっているし。いや、後者については、昔から落ち着いているときは無くもなかったけれど。それにしたって。……私も人のこと言えないのか。今だって、されるがままに、直江の手の感触を追いかけているのだから。
目を閉じて、まどろみと似た感覚に揺蕩いながらの考え事は、ふわふわして輪郭が安定しない。頬を親指で優しく擦られたので、そちらに顔を傾けた。直江の手の平に頬がぴったりくっつく。
直接触れる直江の体温は、私より熱い。平熱が高いらしかった。私は人の体温って苦手だな、と思っていたから、これを心地良く思う自分が不思議になる。とは言っても、苦手じゃなくなったわけじゃない。直江が特別なだけだ。
そろそろ眠ってしまいそうで、ふと目を開ける。直江と視線がかち合った。彼の目もとろりとしている。一見すれば眠そうにも見えるけれど、隠す気のない熱っぽさによって、そうではないことが分かる。そんな視線にはさすがにどきっとして、しっかりした首に顔を埋めた。笑う声が耳をつく。ほんのわずかな腹立たしさは、瞬時に消えた。直江の手が私の髪を撫でたかと思うと、指先が髪の間に差し込まれていた。頭皮にほど近いところを擽られるのも、これはこれで、良い。気持ち良い。
もっとしろ、の意味で抱きつく力を強めると、同じように身を寄せられた。
title by afaik 180614